第370章

望月琛は小首を傾げ、ふっと笑みをこぼした。

「芸術家というのは、物語に深みを持たせるために悲劇的な結末を好むものだ。だが、人生というのは必ずしも悲劇だけでできているわけじゃない」

前田南は長い間伏し目がちになっていたが、やがて顔を上げ、晴れやかな笑みを浮かべた。「人の一生はそれぞれ違うものよ。悲劇か喜劇かなんて単純に分けられるほど、人生は甘くないし、もっと複雑なものだわ。……さて、ミュージカルも終わったことだし、そろそろ帰りましょうか」

望月琛も話題を変えることにし、真剣な眼差しを彼女に向けた。「腹は減ってないか?」

前田南は首を横に振る。「別にお腹は空いてないわ。ただ家に帰りたいだ...

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